日本の野球 − マイナー・チェンジ

C.J.ニコースキー

福岡、日本(AP) − 日本に来るならなんでも受け入れ、なんでも経験してやろうという広い心を持つといい。わたしの場合、今シーズンなんとしても避けたいと思っていたことのひとつに二軍降格があった。不幸なことに避けることはできなかったのである。

アメリカにいた頃、日本のマイナー・リーグがいかにひどいかよく聞かされていたのだ。しかしうちのファームないしニグン経験は嬉しい驚きに満ちていた。

お涙頂戴の話をするつもりは毛頭ない。しかし防御率1.46という自分に油断していたら二軍降格を言い渡されて呆気にとられたとだけ言っておこう。わたしは二軍で3週間を過ごした。あれこれ異なる部分もあったが、以前聞いていたほどひどくはなかったのである。

日本のマイナー・リーグに関して、まず、というか一番大事な部分はサラリーである。アメリカのマイナー・リーグのサラリーはそれはもうおぞましいもので、とりわけメジャーのシステムを最底辺から這い上がろうとする新人にとってはたまらない。

ここ日本には実質的に分割契約は存在しない。二軍にいようと一軍にいようとサラリーは変わらないのである。一軍の最低保証年俸1500万円(約12万ドル)を下回る選手はほとんどいない。お給料が減らないというのは、二軍体験を耐え忍ぶにあたって重要な要素となる。

日本の二軍、というかホークスの二軍に関して素敵な面のひとつは、移動しなくていいことだった。ホークスの二軍チームも福岡を本拠地としており、一軍のスタジアムからわずか20分の場所に位置している。わたしはこれまでの野球人生で、降格、昇格、トレード、フリーエージェントのたびに家族を引き連れ引越しを繰り返してきたわけで、それが必要ないというだけでも随分ちがうのだ。家族はご機嫌だし、そうなれば結局わたしもご機嫌になるという次第。

日本のマイナー・リーグのスケジュールに慣れるには少し時間がかかった。二軍のシーズンは一軍のそれと同期間すなわち六ヶ月続くが、試合は88しかない。一軍の144試合に較べるとえらい差である。

アメリカの場合、マイナー・リーグは5ヶ月間で144試合、メジャーは6ヶ月で162試合である。

どう考えても88試合は多いとはいえないわけだ。

また、試合はすべてデーゲームである。一軍はナイターが主流なので、これも調整が必要となる。

正直にいうが、わたしにとってはデーゲームは歓迎すべきスケジュールだった。うちの子供たちはこの頃インターナショナル・スクールに通っていた。一軍所属時のわたしは日中は家にいて夜は出っ放しという生活をしていたので、これが逆転するとなると子供たちと一緒にいられる時間が一気に倍増した。

試合がない日はたっぷり練習することになる。日本で生まれた選手ならば、それはもう一日中練習漬けといっていい。おまけにかれらは大の練習好きなのだ。これがガイジン(外国人)の投手にとっては早上がりの日になってしまう。

外国人選手は多くの特権を認められているが、もっとも大事なのは自分に合ったレベルの練習をすることである。で、わたしの短縮ヴァージョンの練習メニューだが、他の選手が暗くなるまで練習している最中、こっちは帰宅してランチを食べる。後ろめたくないか、とお思いの向きもあろうが、それはちがう。わたしは量よりも質を重んじる人種である。練習を終えたら帰宅するのが筋なのであって、あとは単なるまやかしにすぎない。

移動に関しても一軍と二軍の差はあまりない。どこにいくにも新幹線を使うし、一軍選手と同じチームスーツを着用する。

アメリカのマイナー・リーガーが受け取る一食あたり20ドルという食費もない。われわれが泊まるホテルには上質の朝食、昼食、夕食がついている。アメリカのマイナーリーグ選手よりもずっと上等かつ栄養に富むオプションが用意されているといえよう。

日本の各球団はその傘下にマイナー・リーグチームをひとつしか抱えていない。一方アメリカの球団はだいたい5から6チームを抱えている。この差はすなわち、日本の球団はマイナーリーグ用予算を一点に集中できるということを意味する。42名の二軍選手たちには6名の専従コーチング・スタッフと4人の医療トレーニング・スタッフがついている。

筋トレコーチはいうにおよばず、移動手配スタッフ、ブルペン捕手、すべて揃っていて、全員が専従職員なのだ。アメリカでは、マイナー・リーガーにはコーチ3人とトレーナー1人がつくだけである。誰でもいい。マイナー・リーグのトレーナーをつかまえて、4人のスタッフが欲しいかどうか聞いてみるといい。スタッフ二人と引き換えに左腕を差し出すだろう。マイナーのトレーナーたちは複数の責任を背負わされてそれは大変な仕事をこなしているのだ。

一日が終わってみれば、日本のマイナー・リーグはわたしがアメリカで聞いていた民間伝承とはまったく違うとわかった。もちろん日本に来ることになるのなら、一軍でプレイしたほうがいいに決まっている。

わたしも一軍に戻れて嬉しいし、願わくば二度とふたたび日本のマイナー・リーグは見たくない。しかし見る羽目になったとしても、それほど悪くはないとわかっているのが救いとなるのである。


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