わたしを野球に連れてって…風船つきで − 福岡の開幕日

C.J.ニコースキー

For The Associated Press

福岡、日本(AP) − これまでの野球生活、開幕日はいつも楽しかったが、ここ日本での開幕日も特別だった。故国から離れること7000マイルという場所で新たな野球シーズンを迎えるわけだが、胸に迫る感情はいつもと同じだった − 来るべき年への興奮と大いなる希望である。

ソフトバンク・ホークスは独特の開幕法を有していた。合衆国ではおなじみの戦闘機飛来もハクトウワシもなく、あるのは日本趣味とプライドだった。

ヤフー!ドームの開幕ショーの見せ場は伝統的な太鼓儀式だった。ニジョー・キズナ・タイコと呼ばれるグループがファンたちをまえに興奮を呼ぶ演奏を行った。聞いた話では、この太鼓のリズムは福岡の歴史にまつわる独特のものだという。この国には各地に固有の太鼓のリズムがあるのだそうだ。伝統衣装に身を包んだ若者たちがなかなかのショーを見せてくれた。

続いて日本で一番有名なオペラ歌手ケイコ・ナカジマによる日本国国歌「きみがよ」の独唱が行われた。よくわからないわたしでさえ、なにか特別のものを耳にしている気分になったし、観客たちは明らかに楽しんでいるようだった。

この日一番気に入ったのは、ホームとヴィジター両チームの選手紹介がなかったことかもしれない。たとえばシア・スタジアムの開幕日にフィラデルフィア・フィリーズの選手を全員紹介する意味がどこにあるのか、わたしには長年の疑問だったのである。

わたしもかつて恥辱の花道を歩いたことがある。拍手してくれるのはチケットをくれてやった連中だけだったし、それもどのみち聞こえやしないのである。他のファンたちが全員、こちらにブーイングを浴びせてくるからだ。なにが面白いのかさっぱりわからなかった。

この点は日本人のほうが正しいのである。両チームが同時に一列で歩いてきて、ピッチャーズ・マウンドをはさんで向かい合う。両監督が紹介され、それぞれ自チームのまえで位置に着く。

われわれの監督は伝説の王貞治である。オリックス・バッファローズのほうはかつてアストロズとエンゼルズを率いた初来日のテリー・コリンズ。簡潔にしてさっぱりした紹介だった。

両監督にはそれは巨大な花束が贈られた。これは日本の試合の定番メニューである。実のところ、ホークスの食堂全体が人気選手の贔屓筋から贈られたお祝いの花束でごったがえしていた。おそらく15から20はあっただろう。

当然ながらわたしは花束をひとつ持ち帰り、あたかも自分で思いついたかの如く妻に贈呈したのである。何者かがすでにピンクの薔薇3ダースを送ってきており、わたしの小細工は水泡に帰したのであった。

試合のほうはいささか盛り上がりに欠けた。うちのエースはおそらく次回のメジャー輸出の目玉となるであろうカズミ・サイトウであるが、これが出来がよくなかった。つめかけた35000人超のファンたちは勝利を手土産に帰宅することができなかった。われわれは開幕戦を8−4で落としてしまった。わたしのデビューもまた開幕前のショーほど褒められたものではなかった。日本のブルペン運営法は少し違うのであり、この点わたしは若干の調整が必要になるだろう。

開幕戦でわたしはこの13年間保持してきた個人記録を破ることになった。5回別個にウォームアップを要求されたのである。野球では単に「アップ」と称するが、これまでの野球生活は4回アップしたことが2度あっただけである。この歳で5回のアップは歓迎されざる離れ業といえるだろう。

結局わたしは投げることになった。ツーアウト二三塁で左打者と対戦したわけだが、そいつはわたしの速球を思い切りグラウンドにたたきつけた。ボールはファーストの頭上を越えてシングルヒットとなった。日本での野球キャリアの皮切りとしてはなんとも素敵な「人工芝ヒット」である。

わたしが対戦した打者はそいつだけだった。おかげで最初のアウトを記録するには次の登板を待つしかない。ワンポイントのリリーフにとってなにが最悪といって、引き継いだランナーに得点を許した挙句にアウトひとつもとれず、スコアシートのIP欄のボックスにゼロを見ることである。

贔屓チームが負けていようが、日本のファンは楽しむという点では決して裏切られることがない。かれらはわたしが出会ったなかでもっともお祭り好きな、それでいてもっとも礼儀正しいファンたちであろう。

試合中は常に太鼓が鳴り、ラッパが吹き鳴らされ、組織的な応援が続くパーティー状態といってよい。わたしの5歳の娘が怖気づくほど、日本のプロ野球は一瞬の静寂ですら無縁の世界なのである。

ファンたちが一番待ち望んでいる瞬間は毎試合、7回にやってくる。リグリーの「わたしを野球に連れてって」でもなければ、フェンウェイ・パーク8回の「スイート・キャロライン」でもないが、かなり近い雰囲気はある。

7回の表、敵軍の攻撃中に、ホークスのファンたちは全長3フィートばかりの巨大な黄色の風船をふくらませる。大観衆が集まったときはちょっとした見ものであり、開幕日はまさにそういう状況だった。

イニングが終わると、ホークスの応援歌が演奏される。ファンたちは歌いながら音楽にあわせて上げ下げする。上げ下げのタイミングにも決まりがあって、知っておいたほうがいい。うちの7歳になる息子はもう覚えてしまった。歌が終わるとファンたちは風船を放す。20000を越える風船が同時に宙を舞うさまを見たことがないのであれば、日本に来るしかないといえる。

この風船はアメリカのガーデン誕生日パーティーで使用されるタイプよりも空気放出速度が遅いらしく、かなりかん高いピー音を放つ。なんともクールなしきたりであり、一度は見る価値がある。グランド内に落ちる風船はほとんどない。たまに落ちても警備員や係員がすぐに回収してしまう。

風船が宙に舞ってから一分も立てば、もはや黄色のゴムは影も形もなくなってしまう。

ファンたちは風船を心の底から愛しており、チームが勝てばもう一度「ビクトリー・バルーン」と称して宙に舞わせる。唯一の差異は、風船の色が黄色から白に変わる点である。

どうも日本人は風船をふくらませて宙に舞わせるためならいかなる口実でも設けるという感じである。

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