学習曲線

 

200893- 札幌

試行錯誤。物事の基本である。人は過去の失敗から学ぶ。あることを決める、或いはある方法で何かをやって失敗する。すると人は二度と同じ過ちを繰り返さないよう、調整するものだ。或いは少なくとも失敗しない確率を高める様にする。人は誰でもそうやって学ぶのであり、子供でさえも同じである。わたしの娘がオーブンや電子レンジから出したばかりの熱い皿を触って火傷をしたら、もう二度と触らないだろう。

しかしながら、何故か日本ではそれと同じ様なことがレッスンとして学ばれることがない。ほぼ2シーズンをここで過ごしてきたが、投手に関して同じ過ちが、繰り返し繰り返し、そしてまた繰り返し犯されるのを見るにつけ、驚かされるばかりである。

日本では試合でも練習でも投手達は信じられないほどの球数を投げる。それが日本のやり方であり、投手達はそうすることが好きで、それで上手くいっていると教えられた。それが少しでも本当なら信じることも出来たが、実際には全く真実ではない。

一番良い例は、春季キャンプの時にブルペンで160球投げた投手だ。翌日、彼は10分間の打撃練習に登板した。彼はそれが日本の魂(ジャパニーズ・ソウル)だと言っていたが、わたしは、そんなことを続ければ日本の手術(ジャパニーズ・サージャリー)が必要になるぞと反駁した。彼は笑っていた。そして昨シーズンの一部と今シーズンの全てを、腕の手術のために棒に振ることになった。

実際、我々の一軍登録メンバーを見て、腕に何も問題が無い投手が一人としていないと知ったら、驚かれるだろう。しかし伝統は続き、投球は繰り返されるのである。

我々は、昨シーズンの大半と今シーズンの全て、腕の故障の為にエースを欠いている。彼は馬車馬として知られていて、彼が登板する時にはいつも完投が当たり前、そうでなかったらがっかりであり、投球数は全く関係無いのである。我々はいま、プレーオフ最後の2つの椅子を巡って4チームで熾烈な戦いを繰り広げており、彼が今シーズンいてくれたら本当によかったのにと思う。

最近、1200の引き分け試合を演じた。相手の投手は9回で171球を投げたのである!誤字ではなく、本当に171球で9回をシャットアウトしたのである。その試合、我方の先発は10回をたったの143球で0点に抑えた。彼は今シーズンと昨シーズンの一時期、肘の故障で投げられなかった。

最も最近の例は、つい今週のゲームだった。またしても先発投手を怪我で失ったのだ。彼が先発する前日にブルペンで投げていたのを見たことがあるが、そんなのアメリカでは聞いたことが無い。アメリカの投手コーチが聞いたら驚くだろうが、狂気は続くのである。彼は良いシーズンを送っていたのに、大変残念である。

リリーフ陣はもっと最悪かもしれない。可哀想な彼らは、毎日、登板をし続ける。シーズンも最後の1ヶ月に入り、彼らは自分の名前が呼ばれると、嫌々ながら何とか起き上がって投げている様に見受けられる。ここではそれが普通であり、そうすることが好きだと言うリリーフ投手にはお目にかかったことは無い。単に言われたからそうするのである。わたしの場合、解ってもらうのに数ヶ月かかったが、ようやくチームもわたしの試合への準備の仕方を理解してくれて、本当に必要な場面で無ければ、意味の無い登板の為に起き上がったりはしない。みんなわたしのことが羨ましいだろう。自分のペースを守り、自分の腕にとって最善であると解っていることをする自由を許されているからだ。

もしそのブルペンのシステムに欠陥があることの証拠をお探しなら、これ以上のものは無いだろう。今シーズンの大半、我々は抑え投手、中継ぎ一番手、そして最も経験のある左投手を怪我で欠いた。われわれブルペンの回転率の高さも特筆すべきであり、本当に沢山の投手を使った。それはなかなか安定した力を発揮できなかったのも頷ける。

それはまるで、線で繋ぐことが出来ない点の様である。怪我をした時、90%は怪我をした本人の責任であるということを聞いたことがある。弱いから、ちゃんとコンディションを整えないから怪我をするのだと。それは全くの無知である。人間の体はオーバーハンドでボールを投げる様には出来ていない。それは無理のある動きなのである。勿論、投げることは出来るのであるが、余程慎重に腕を管理しなければならない。 だからこそ賢いトレーニングをしなければならないのだ。

怪我もゲームの内であり、完全にそれを防ぐことは出来ない。しかし、ここではそれがとても危険な頻度で起きており、何らかの修正が必要である。伝統的なやり方は古めかしくて、効果が無い。人間は、前の世代よりもより賢くなるべきものである。しかし、我々はどうも5世代ぐらい遅れている様に思える。

子供が友達の悪い行いを真似した時、親達はもしも話しとして言うものだ。だったら友達が橋から飛び降りたら自分も飛び降りるのかと。日本野球に於いては、答えはイエスである。