伝統を守る

 

200886 神戸・福岡間の新幹線

わたしがキャリアを通じて苦しめられていることの一つで、何度も経験しているのが、オールスター休み明けの最初の試合での出来の悪さがある。これを克服する為に出来ることは全てやってみたのだが、どうも何をやっても長い休みの後はしっくりとこないのである。

救援投手というのは、一般的に登板間隔があまり開くことを好まない。わたしはよく言っているが、もし1日おきに1イニングずつ投げることが出来たら理想である。日本ではそれは72試合72イニングということになる。そうなれば良いピッチングが出来る可能性が最も高くなるのは間違いない。しかし実際には我々は救援投手であり、そんな風には事は運ばない。長い間全然投げない時もあれば、3、4試合連続で投げてようやく1日休みが取れる様なこともある。

わたしにとってオールスター明けの最初の試合は、前回の登板から8日後だった。これは、わたしが適度に感じることの出来る最大の間隔である2日を遥かに越えている。自分がシャープでないことは、直ぐに解った。最初の打者に死球を与え、満塁にした後に押し出しの四球を出してしまった。最もやってはいけないことだ。その時点では1点差ゲームだっただけに、余計に落ち込んだ。しかしその後は持ち直して、その後の2イニングをきっちりと抑えた。

言った様に、自分が試合に出ていない時、準備万端で居られる様に出来ることは全て試しているし、やっている。ブルペンで投げたり、多めにキャッチボールをしたりするが、本当のメジャーの試合で投げる時の気持ちや、アドレナリンをシュミレーションすることは殆ど不可能なのである。

短いバケーション

オールスターの前、バファローズ戦での宜しくないピッチングの後、10日ほど二軍に送られた。その降格にはちょっと驚いた。確かに悪いピッチングだった。それは認める。しかし、このところずっと良いピッチングをしていたし、チームが、特にブルペンが、わたしが二軍に行っていた方が良い状態になるとはとても信じられなかった。 10日間だけだからと言われて、確かにぴったり10日間だったが、それにしてもまだ驚きだ。

二軍に行っていて良かったのは、家族がアメリカに帰る前に、一緒に過ごすフリーな時間を持てたことだ。チームが勝つことを助けていたかったが、サンシャインプール、二見ヶ浦海岸、ホークスタウンでのボーリング、海の中道公園、そしてルイガンホテルの夜はとても楽しかった。家族は郷に帰ったので、そしてまた仕事へと戻る。

日本でプレーする外国人選手は、日本人選手よりより厳しい吟味を常に受けることになる。外国人枠が4人しかない中では、外国人選手はチームにとって重要な戦力にならなければならないし、チームにとって欠けている部分を補う存在でなければならないのだから、それは完全に理解出来る。

問題なのは、外国人選手が1試合でも、或いは1週間調子が悪かったりすれば、直ぐに二軍に送られることだ。その結果、外国人選手には完璧でなければならない膨大なプレッシャーがかかることになり、気持ちも沈むということになる。リーグの中で他の選手にも聞いてみたが、みんな同じ様な悩みを持っているし、ホークスが我々に大きな要求をしていることを知っている。

ある外国人の打者は、去年、彼は打席に立つ度に常にホームランを打たなければならない様に感じたと言っていた。そんな風に野球をプレーすることは出来ない。わたしも投手として時に同じ様に感じたことがあった。野球は失敗のゲームであり、よく失敗するものである。わたしは試合で失敗したら、次の試合で必ず挽回して、より良いプレーをしようと思う。その機会を与えられないとしたら、それはイライラすることだし、不要なプレッシャーを自分にかけることになる。そうなると、自分のプレーをすることが殆ど不可能になってしまう。

それが日本における外国人選手の宿命だ。わたしはこのことを何回か言ったが、わたしは今までに、よい投球をしなければならないというプレッシャーをこれほど感じさせられたことは無かった。わたしはアメリカで、例えばニューヨークの様な所で、300試合以上メジャーで投げて来たが、その時のプレッシャーなど、今のこのプレッシャーに比べれば、何でもない。外国人選手は、今まで慣れ親しんだ、評価の基準は無視して、全く新しいルールの下でプレーする覚悟をしなければならない。それは間違いなく難しいことでストレスの溜まることではあるが、うまくいった場合の報酬もまた大きい。

間違えないで欲しいのは、外国人選手はここでプレーすることが好きだし、皆良いプレーをして勝ちたいと思っている。ここで書いているのは、その中で感じるいくつかの困難についてである。ファンはとても応援してくれるし、それに対しては皆さんが思っている以上に我々は感謝しているのである。